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2006年7月20日 (木)

「海猿」、NYで大笑い

フジテレビ系列のドラマや映画で人気の「海猿」、皆さんご存知だろうか。海上自衛隊保安官を務める若者が、仲間との結束や任務の重さ、また恋愛の喜びを実感していく伊藤英明主演の青春物語である。今まで自衛隊という単語は政治的な意図のもと使用されてきたが、これによりイメージが一新されたようで昨年などは海上自衛隊志願者が増えたらしい。志願者の数割が「海猿を観て憧れた」と話しているということで、エンターテインメント以外の効果も見られている。

今年に入り「海猿~THE LIMIT OF LOVE~」が映画公開され、最終章としても話題を呼んだ。なんでも大変感動できるようで、特に自らの命をかけて人々の救命にあたる際、主人公が携帯で恋人にプロポーズをするシーンはハンカチなしでは観られないらしい。

詳しいあらすじを説明すると、鹿児島沖で620名もの乗客を乗せた大型フェリーが事故により座礁し、大惨事の危機に瀕していた。救命に向かう主人公も相当の危険を犯さねばならない。そのとき、彼は近頃コミュニケーションが上手く取れない恋人に大切なことを言わねばと、携帯電話を手にするのだ。そして、「戻ってきたら必ず結婚しよう」と恋人に伝える。一番のクライマックス、号泣シーンとされている。TVCMでも幾度となく流れていたので、記憶されている方は多いだろう。

しかし、ここでニューヨークの人間は大笑い。ニューヨーク・アジア映画祭で本作は上映されたのだが、一番の感動シーンで観客はどっと笑い転げたという。「そんな状況の中、携帯電話を5分も使ってまでプロポーズするなんて」というのが主な理由だ。救命を待つ人々を5分以上も放置したあげく、自分のプライベートを優先させるヒーローにあきれかえったのだろう。

無理もない。危険を犯さねばならない仕事に就くことが、どのようなことなのか理解している人間にとっては絶好の嘲笑シーンだ。まして描かれているのは海上自衛隊であり、海外では「自衛のための軍隊」「先制攻撃しない軍隊」と認識されている一国の軍事力だ。その部隊に属するヒーローが、緊急時に女と会話するとはなんたる軟弱さ。自らの命を賭さねばならぬ使命を背負う人間として、ありえない行動なのだ。このシーンで露呈されたのは、使命に燃える若者の姿ではなく、日頃の覚悟が欠如した情けない海上自衛隊員の姿なのである。

もちろん本作品は政治的に訴える内容のある意見映画でもなく、あくまで娯楽作品なのだ。泣き所を押さえた演出として、このような脚本が成立することも情けないが仕方がない。またハリウッド映画のように、自国の軍隊が世界一だと圧倒的な強さを見せつけたくて制作されたわけでもない。若者の成長を描いた青春ストーリーであり、その舞台が偶然海上自衛隊であったとも言える。”海上自衛隊の責務”が主題ではないのだ。

だが海外に流出するのは日本人として非常に恥ずかしさを覚える。映画祭に出席した監督や出演者は「日本の観客との反応の違いを楽しんだ」らしいが、事実ならばみっともない話だ。個人的に本シリーズは好まないので一層そう思うのだが、リスクを犯しながらも任務を全うすべく日々励む、本物の自衛隊員の方々に申し訳なくも思う。

同じ海上自衛隊を扱った作品に「亡国のイージス」がある。映画はだいぶ去勢された作りになっているが、原作である同タイトルの小説は涙なしでは読めない。どうせならこのような作品が出回って欲しいものだ。

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コメント

海猿は全く興味がわかず、作者がブクジャックによろしくと確か一緒だったと思います。

前に最近は自衛隊の入隊希望者が少なくモー娘。を使ったりしてましたが、そもそも自衛隊って? 問題が出てきちゃいましたね(笑)。

め組の大吾とか踊る大捜査の方が面白いですね。もっとも大吾は原作に限りますが^^;;。
危機的状況で、まぁ携帯でプロポーズも一つの選択肢でしょうが、現実感ないですね。

現在連載中のトッキューなんかは海上保安庁の特殊救助部隊の話なんですが、これは日常と緊急時の違いがはっきりしてて、気が抜ける話題とそうでない話題のメリハリがリアルで好きです。

海猿ってたぶん自衛隊の募集を増やすための映画と思ってました(笑)。

投稿: じゅぁき | 2006年7月21日 (金) 09時13分

えっ、海猿って漫画だったのですか? 知りませんでした…漫画好きなんですけど、まだまだですね。
私も全く興味がなくて、ドラマも映画も観ていません。うーん、なんででしょう、イメージ的にふざけた作りになっていそうで、あまり感情移入できそうになかったので…。
でも加藤あいさんはカワイイ。あ、関係ないですね(笑)。

でも言われてみれば、海猿って自衛隊募集のための作品なのかもしれません。それこそきちんと観ていないので判りませんが、「こんなにカッコいい仕事なんだぜ~!!」とただアピールするだけの内容のような…。

私のお気に入りはブログに書いたように「亡国のイージス」なのですが、原作を読んでめちゃくちゃ泣きました。作者なりの戦後日本に対する懐疑的な視点が盛り込まれているのもよかったし、男達のそれぞれの立場に苦悩する様子は非常にリアルで、共感してしまいましたよ。もともと弱いのです、こういうの。。。宇宙戦艦ヤマトも北斗の拳も号泣しながら観てました。北斗の拳はちょっと違います…か(笑)? ありゃりゃ。

め組の大吾、って曽田正人さんの漫画でしたっけ? 今度漫画喫茶に行ったら読んでみようかな。スピリッツを買っていたので「スバル」は読んでいたんですけど、彼の絵、好きです。
どうせなら踊る大捜査線を映画祭に持ち込んで欲しかったですね。リアリティーは別として、純粋に続きが気になるし面白いですもんね。キャラクターも親近感が湧きますし。
それに深津絵里さんがいくつになっても可愛らしくって…これも映画と関係ありませんけど(笑)。私もあんなふうに歳をとりたいなぁなんて、勝手に憧れています。


投稿: ちゅう太 | 2006年7月23日 (日) 03時52分

『自衛隊という単語は政治的な意図のもと使用されてきたが』とお書きですが、海猿は海上自衛隊の話ではありません。
念のため。
海のもしもは118番の海上保安庁です。

投稿: 通りすがり | 2006年7月23日 (日) 19時56分

亡国のイージスは子連れで見に行けないので断念しましたが、DVDになったみたいだしレンタルしてみようかな?(笑)。

>め組の大吾、って曽田正人さんの漫画でしたっけ?
そうです! シャカリキとか熱い漫画が好みの人ははまります^^;;。
昴は書いてて鬱になりそうだったので連載が中止したとか・・・。
その反動がカペタみたいで、でも面白いですよ(笑)。

ちょっと話題はそれちゃいますが、いろいろ見てると、森秀樹の墨攻っていう漫画は合うかもしれませんね。

投稿: じゅぁき | 2006年7月24日 (月) 15時28分

>>通りすがりさん
うわああ、すみません、ご指摘ありがとうございます。
海上自衛隊志願者が増加したニュースが印象的だったので、てっきり自衛隊かと…気をつけます。観てもいないのに書いた罰ですね。せめて、もっと念入りに公式HPでもチェックして書けばよかったです。
どうもありがとうございました。これからも、何かございましたらどうぞご遠慮なくコメントなど、よろしくお願いします。

投稿: ちゅう太 | 2006年7月25日 (火) 08時38分

>>じゅぁきさん
どうもお疲れ様でございます。
亡国のイージスは、映画より原作がオススメですよ。講談社文庫から上下巻で出ています。映画はちょっと…キーマンである少年の葛藤がいまいち判りづらいのと、全体的に去勢されている感があるので微妙です。先に原作を読んでしまったからそう思うのかもしれませんけど…。
映画もそこそこヒットしたみたいですし、楽しんで頂けるかもしれません。リアルなイージス艦など自衛隊の設備が観られたし、なんだかんだ言って真田広之はカッコいいなぁと思ったし、ぜひお暇があればご覧になってみてください。

そうでしたか、スバルは鬱になりそうだったから、連載中止に…いつになったら復活するのかなぁと楽しみにしていたのですが、残念です。確かに絵もストーリーも重たげでした。読者としてはそれがよかったんですが、描き手は参ってしまうかもしれませんね。

ごめんなさい、森秀樹さんの「墨攻」、全く判らないです…今、森秀樹さんの漫画を検索したら「海鶴」という作品がヒットして、オンラインショップで立ち読みをしたらわりと好きな絵です。線の太い、力強いタッチは好みなので。海鶴そのもののストーリーも面白そうですね。
漫画喫茶での宿題が増えて楽しみです。ちょっと家のことでバタバタしているので(それもこれも、雨が悪い!!)、もとのヒマな日常に戻ったらフラフラ読みに行って来ます♪ もうパチンコ屋さんに打ちに行くこともないでしょうし(笑)。


投稿: ちゅう太 | 2006年7月25日 (火) 09時00分

>>通りすがりさん
色々ありがとうございました。コメントの表示はどうしようか迷ったのですが、今回は非表示にさせて頂きました。
でも、お礼の言い様がなくなってしまいますし、ここで返信させて頂きます。

これからも似たような話や、テーマは扱うでしょうし、あるいは全く違う内容の話題であっても、ご指摘など頂けると嬉しいです。決して間違いを指摘されて喜ぶ性質なのではなく、あぁヤってしまったとヒヤヒヤ反省しています。ただ今後モノゴトを調べる上でより慎重になれるきっかけを与えてもらえるわけで、心のどこかで有難さを感じます。

今後も読んで下さると、嬉しいです。何かありましたら…ぜひ。それでは、また。


投稿: ちゅう太 | 2006年7月31日 (月) 04時53分

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