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2006年7月26日 (水)

女友達の彼氏

今日の午後、数少ない女友達から電話がかかってきた。大学時代に同じサークルで、仲良く一緒に留年した仲間でもある。そう、私は大学を留年している。就職活動のため、といったいっぱしの理由があるわけではなく、単純に単位が足りなかった。日々の酒や麻雀、また趣味の旅行が高じた結果だ。つまるところ、遊びによるものだ。

しかし彼女の留年は意味が違う。大学二年のとき、イギリスに語学留学をしており、そのため他の同学年の人間より一年遅れて卒業することになったのである。就職活動においてもその方が都合がよかったらしく、実に有意義な留年の形をとっていた。そんな彼女だけあって当然ギャンブルにも手を染めず、生活態度は真面目だし口を開けば頭の回転が良いことが伝わってくる、様々な人間が在籍するサークル内でも優等生的な存在だった。

根っからの遊び人である私は、本来このような教科書的な女性と上手くコミュニケーションなどとれそうにないのだが、幸い彼女は酒飲みだった。その好みも私とほぼ同じで、焼酎や日本酒といった居酒屋で飲める強い酒を好み、そう簡単に酔いつぶれることのない性質だった。どんなに酒が入っても人当たりの良さや、普段の知的な話し振りが変わることがないのが彼女の魅力で、逆に頬を少し赤く染めながら話題に(私たちはよく小説や映画、歴史や哲学など、何かしらの作品や思想に関しての話ばかりしていた)熱中する姿が素敵だった。私はその隣でいつも気分よく酔っ払っていた。

集合時間はバイトが終わる夜の十時、それから明け方まで飲み明かして顔を真っ赤にして帰ったり、潰れた片方をタクシーに乗せたり、ファミレスで酔いを醒ましたり、とにかくよく二人で酒は飲んだ。一緒に買い物をしたりお茶を飲むといった、ごく普通の会い方は殆どせず、もっぱら私たちの間には酒があって、その付きあいは今でも続いている。私が結婚してから滅多に飲めなくなってしまったが、日々メールや電話で互いの状況は伝えあっていた。

彼女は未だに未婚だし、その語学力を生かした仕事で活躍している。そこそこのポジションと収入もあるらしく、言ってみればキャリアウーマンといったところで、社内でも学生時代からのイメージを保ち続けているようだ。かといって浮いた話が何一つないわけでもなく、学生時代も恋人がいたし、社会に出てからもいくつか恋をしていた。ただそこでも彼女の真面目なイメージはついてまわり、そう予想通り、ひどく男性とのやりとりに臆病で鈍感で、いわゆる恋愛下手なのだ。

「最近、彼氏ができたんだけど」と受話器の向こうで彼女が言う。「ちょっとねぇ、聞いて欲しいんだ」

新しい恋愛をしているわりに、実に重い声をしていた。そうかそうか、そういうことか、長電話になりそうだなと携帯を片手に私はベッドに寝転んだ。

「相手は同い年で、税理士事務所に勤めているの。またきちんと資格をとったわけじゃなくて、なんていうの? あの資格、実務経験が二年必要でしょ。その実務期間らしいんだけど、つまり見習いってやつね。これが好青年でね、ウチの母親に見せたら絶対一目で気に入ってしまうくらい白い歯をしているし、挨拶とか話し方もしっかりしているサワヤカな雰囲気の人なの」

「いい人なんでしょ?」サワヤカなのはどうでもいい、問題は人柄だよと私は言った。

「そりゃ、いい人だよ。人並みの思いやりはあるし、それでいて他人に変に流されないし、真面目だし…うん、いい人だと思う。つい何日か前に付き合うことになったんだけど」

「へぇ、よかったじゃん」

「それでね、昨日の夜、ちょっと飲みに行ったのよ。仕事も早く終わったし、私も彼もお酒は好きだし」

「わかった」ついニンマリ笑ってしまった。「あんた、ペロペロに酔っ払っちゃったんでしょ。それでちょっと恥ずかしくなっちゃって、どうしようってコトでしょ?」

「ううん、違うよ!!」彼女はちょっと声を上げて否定した。「そんなんじゃないよ。あのね、その二人で飲んでいるときに、彼…山手線ゲームを始めたの

「えっ…二人で飲みに行ったんだよね?」

「そう、二人で。私と彼、二人しかいないの。ごく普通の、個室のある居酒屋で飲んでいたんだけど…ふと話題が途切れたとき、『じゃぁ山手線ゲームしよう!!』と勝手に盛り上がり始めちゃって。私がどんな風にやればいいのかわからない、って遠慮したら『簡単だから教えてあげるよ。じゃあ、リズムにあわせて、山手線沿いにある駅を挙げていって』って手を叩き始めて…どう思う?」

「ごめん、それ、私は無理だわ」

「だよねぇ…」彼女はため息をついていた。

「でも、面白そうだから私が会ってみるまで付き合っててよ。いい人なんでしょ?」

「いや、私もそれは無理だよ」

「そうだよねぇ…」

会社の昼休み中だった彼女はしばらく世間話をした後、電話を切った。彼とは数日中に別れるね、と言っていた。好きになった気持ちは本当だけれど、まだ愛着や恋人であるという現実感が生まれる前にわかってよかったとも言っていた。冷静な口ぶりにちょっと私も気を遣ったが、いや、それは別れて正解だよ。

しかし…彼女と飲んでいるとき、しかも付き合ってまだ数日の、出来立てホヤホヤの恋人を前に山手線ゲームとは。一体どんな男なのだろう。彼女には気の毒だけれど、さすがに興味の湧く人物像である。きっと酒の席でのマトモな会話を、学ばずにきてしまった男なんだろうな。それでいて普段はサワヤカで真面目そうだというのだから、面白い。けれども、確かにこのような男を恋人にせよというのはゴメンである。そんな男に流されず決断を下せる女友達をもって、不謹慎にもちょっと嬉しくなってしまった。

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コメント

う~ん、彼氏に同情しちゃう(笑)。
どちらかという自分も彼に似ている。
さすがに山の手線はしないけど^^;;。

私はお酒はほとんど飲めないし、どうしてもというとき以外は飲まない。
かみさんの実家で一回飲みすぎて帰れなくなり泊まった事があったけど(爆)。

でも、お酒の席は好き、会社以外で限定だけど^^;;。

飲んでなのによくハイテンションになれるねと嫌味なんだろうけど、褒め言葉ととってます(笑)。
一度ウーロン茶でよっぱらったように見られてしまった、店の人から^^;;。

ま、そんな感じなので、私のまわりでお酒好きの人も遠慮なく飲めるから酒の席も楽しいです。

ただ、二人っきりって話題が途切れるとヤバいって思ってとんでも君になるかも!?
と、読んでて思った(笑)。

今はかみさんがいるからいいけど、いなかったらこの人と同じような事になってたかも(笑)。

投稿: じゅぁき | 2006年7月27日 (木) 10時10分

勝手なイメージですけど、じゅぁきさんってお酒が飲めると思ってました。自分が酒飲みだからみんな飲めると勝手に思い込んじゃうのもありますが、…なんとなく(笑)、すみません。どちらにしても、話題につまったら(いや、つまることはなさそう…)山手線ゲームを始めるような方とは思えませんよ。

うーん、この場合、何て言うんでしょ。私の表現が曖昧だったんですが、多分ともだちは山手線ゲームの様子を見て、彼を「合コンとか、サークルの飲み会でも騒ぎながら飲んでいたタイプなんだろうな」と感じたのだと思います。ちょっとノリが軽そうに見えるというか、遊び好きそうな一面が垣間見えたというか…。うーん、伝わります? 漠然としちゃってて申し訳ないです。
いわゆる、チャラチャラした感じとでも言うのかな…私も彼女も、こういう騒ぎ馴れた男性って苦手なんですよ。彼女はともかく、遊び人の私が言うのもなんですけど(笑)。

もちろん、山手線ゲームをやる方全員がこうだとは思いませんよ~。大丈夫です。それに話題に詰まって、相手と必死にコミュニケーションしようと努力している様子って、山手線ゲームをしていようと一緒にいれば伝わりますよ、きっと。少なくとも、彼女はそういう優しさを持っているので、きっと今回は「何? このチャラチャラした感じは!?」と少しイライラしちゃったのでしょう。

20代のうちって、社会人らしくあろうと普段は真面目に、しっかり屋さんらしく頑張る方が多いと思うのです。多分、今回の彼はそのメッキが残念ながらはがれちゃったのかもしれません。

でも奥様のご実家で飲みすぎて、だなんてアットホームでいいですね。ひょっとしたら気苦労もあったのかもしれませんが、賑やかな雰囲気が伝わってくる一言です。いいですよね。そういうの。
別に私も旦那の家族と仲が悪いわけではないのですが、「女は女らしくしてなさい」といった、やや封建的な雰囲気の家なのでまだノンベエの自分を見せられません(泣)。でも義母も随分酒飲みらしいので、二人で飲む機会でもあればいいのになぁと、少し寂しく思います。
でも、お酒が飲める飲めないは実際のところはどうでもよくて、一緒に楽しくいられれば何でもいいですよね。


投稿: ちゅう太 | 2006年7月27日 (木) 12時05分

あっ、勘違いしてました、すみません^^;;。
メッキの方でということですか?(笑)。

>じゅぁきさんってお酒が飲めると思ってました。
見かけも大酒のみと思われて、前にもネットで話してる人からも酒飲みと思われていました^^;;。

見かけはよくいえば恰幅がいいからですが、文章でもそう思われる人多いです。
ちゅう太さんが初めてじゃないので大丈夫ですよ^^/。

>きっと今回は「何? このチャラチャラした感じは!?」と少しイライラしちゃったのでしょう。
なるほど、確かにいますねそういう男は。
なぜか私とは相性悪くて、そういう人は友達になれないのですが^^;;。

>でも、お酒が飲める飲めないは実際のところはどうでもよくて、一緒に楽しくいられれば何でもいいですよね。
そうですね、楽しい事もいろんな事もやっていけるのが一番ですね。

ちなみにお酒を飲める人がお酒で損をするのは限度を越えてのんだときだけだと思うのですが、今の日本は飲めない男はそれだけで損をするときがあります(>_<)。
まして飲めそうな体つきって理由で飲めないとわかると「裏切られた」ってorz。

なので会社関係でのみに行くの嫌いになって、全然いかなくなりました(笑)。

投稿: じゅぁき | 2006年7月28日 (金) 09時29分

いえいえ、私もテキトーに書いていたので…確かに読み返してみると、彼女がどう判断したかまっったくわからないので(反省)、当然でございます。

でも、いるんですよ~~~こういう男性。もちろん、女性でもいますし。見た目やら話し方やら、全体的な雰囲気や居心地で「自分と合わないタイプだなぁ」と判ればいいのですが、ホントに両親ウケのいいような好青年なのにフタを開けてみたら…ってなタイプもいるので厄介です。
それに個人的な経験上(笑)、好青年タイプはもともと苦手なんです。人間の泥臭いどうしようもない部分に、わかったような口をいっぱしに叩いて、それでいて他人を傷つけたりあるいは他人事のような顔をしていたり、…まぁ好青年タイプの全員がこんなだとは思いませんが、なんかもう顔も頭もスタイルもイイ奴ってのはチヤホヤされて育ってるケースが多いので、苦手です。世の中のイケメンなんて、ちっともカッコよく思えませんよ(すごい先入観ですが…あぁじゅぁきさんに上手く伝わりますように…)。
しっかり挫折して乗り越えて、それでいて麻雀の強い男性が好みのタイプです(笑)。芸能人で言えば寺島進のような…なんじゃそりゃ。そもそも麻雀が強いかわかりませんし。

わけがわからなくなってしまいました。。。

お酒は飲めない方にとったら、辛いですよね。最近はアルコール・ハラスメントなんて言葉も若い人に浸透して、それぞれ思い遣ったりするようですが…。
とくに職場だと、付き合いで酒が必ず絡みますし。それでも飲めない方は必ずいるし、みんなが気を遣いあうべきだと思うのですが…飲む場所を焼肉屋とか、お酒メインの場所にしないとか。せめて一次会だけでも。
それに飲めないのはどうしたって仕方がないわけですし。うーん、「裏切られた」ってのはイヤな気分になっちゃいますね。
そもそも、飲めない方が無理して飲んだらどうなるか、みんな判っているんでしょうか。迷惑をかけたくないから「飲めないよ」って伝えているのに、…その心情を理解して欲しいですよね。

投稿: ちゅう太 | 2006年7月31日 (月) 03時50分

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