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2006年11月 9日 (木)

フセイン元大統領に死刑判決

フセイン元大統領に先日死刑判決が下ったが、年内にも執行される予定らしい。物悲しいニュースで、東京裁判の歴史を持つ日本で育った一人の人間として、切なく思う。

各国メディアで勝手に「独裁者」と銘打たれ、あたかも悪の根源かのようなイメージが報道されてきたフセイン元大統領だが、その実は教育制度の整備によってイラク国民の識字率や知力を高め、女性の社会進出を奨励するなどイラク近代化に大きく貢献した人物なのである。"独裁国家"などと、アメリカを始めとする民主主義国家によって様々な批判がなされてきたが、国家にはそれぞれの事情があるのだから、必ずしも多数決で抽出された民意を実現することが良き統治方法とは限らぬだろうし、民族間の紛争やまぬイラクで何故アメリカを代表とするような民主主義政治を遂行できるのだろう。

アメリカの、他国の事情も歴史も文化も思想も尊重せず、さも自らが神の国家のように振舞うという厚顔ぶりには、心底辟易としてしまう。
侵略的行為そのものを否定するつもりもなく、それは弱肉強食という人も逃れられぬ自然の摂理を証明する一つの必要悪のようにとらえているが、アメリカのやり口というのはそれにしても品性を欠いたもののように思う。確かに戦に負け、イラクを路頭に迷わせた責任は統治者であるフセインにあるものの、彼を裁く権利はイラク国民のみにあるのである。さらに言うならば、フセイン元大統領の政治を批判し改善したいのであればその権利もイラク国民にしかないのである。一体なぜ遠く離れた、文化も宗教も、法制度も異なるアメリカの法廷でフセイン元大統領が裁かれなければならぬのか。

そして東京裁判では原子爆弾投下については触れられず、今回の裁判でも大量破壊兵器が見つからなかった事実は全く裁かれない。勝てば官軍、とは言ったものだが、法の下では何人たりとも平等であるという世の中のルールを無視した正義など、正義足りうるのだろうか。その上、ブッシュ大統領はよく「正義」という単語を演説で使用するのだから、全くお笑い種である。

フセイン元大統領が捕らえられたとき、あるいはイラクが敗戦を迎えたとき、こうなることは予測できていたものの、いざその判決が下ってみるとひどく物悲しい気持ちになった。このニュースを淡々と伝える日本のメディアにも、情けなさを再び覚えた。少なくともGHQ統治下にあった十年間で、日本人の政治意識、歴史認識あるいは死生観までもが大きく変化した。これによる数々の負の遺産もあれば、恩恵もある。ただ敗戦の歴史があって現在があり、その空気を吸いながら今の私は生きているので、少なくともアメリカに占領統治された悲しい歴史も受け入れなければならない。しかし、受け入れることと、忘れることは大きく内容が異なるのだ。現在のイラクと同じ歴史を持つ日本で育った人間が、このニュースに不感症であるなど、ブッシュ大統領よろしくお笑い種である。

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コメント

フセインに対して思う事は、陽の部分も認めるが、やっぱり大量に人殺した実績があるので、それに対する判決として死刑は妥当だと思います。
クルド人大量虐殺もそうだし、過去にはクェートへの侵攻もありました。
それだけで十分な理由になると考えています。

裁判は確かにイラクに任せるべきではありますが、傀儡政権とはいえイラクの法廷で裁かれた意味では東京裁判とは違うと私は
感じました。

でも、アメリカのやり方は絶対に賛成できない点では同じ価値観なんだなと思いました(笑)。
油の権利欲しさに、相手の陰の部分に付け入り、正義という刃を振りかざして、自分の利権をも正義に置き換え攻めた事は決して許されるべき事ではないでしょう。

民主主義が正義で独裁者が悪とは決して思いませんが、独裁者が悪になりやすいのは歴史が証明してしまっています。
陰と陽は必ずあります。
それと人の命の重さを天秤にかけた結果と私は受け止めました。

今後はイラクの内部にある部族同士の内紛が残っています。
まだまだ問題は山積みです。
そういった事に政府は手を差し伸べて欲しいなと、ふと思いました。

投稿: じゅぁき | 2006年11月 9日 (木) 09時45分

なんとなく(?)お久しぶりです、じゅぁきさん♪
風邪…大丈夫ですか?
私は近頃やたら元気になった愛鳥の世話で、もうてんてこまいです。。。ちょっと部屋から出るだけで「ぴぃいぃいぃ…」とこの世の終わりか?ってなくらいの声で鳴かれるので…。。。甘やかし過ぎちゃいました…。

上手く伝わるか不安なのですが、虐殺や侵略って、イヤなことで倫理的には許されざる行為だと思っているのですが、
その…。
こういった"蛮行"に至るまでの経緯があったり、あるいは"蛮行"によって生まれるものもあるわけで(イヤな言い回しですけど)…"蛮行"にも光と影が存在するんじゃないかなー、と個人的には考えているので、一概に、他国の政治家さんの行動の善悪を判断しづらいなぁと…。

例えば、アメリカが日本を占領統治したことも一種の蛮行ですが、それがなければ現在の日本もないわけで、といったような…。

なので、蛮行だけれど必要悪のような行為だと思っています。

>>独裁者が悪になりやすいのは…
何をもって独裁者と位置づけるか微妙ではありますし、
マトモな政治を行った王は崇拝され、
民衆を貧窮に追い込むなどした王は独裁者と詰られます。
ヒトラーなどは、例外でしょうが。

ただ、"悪"になりやすい、というのは現代の日本で生きる私たちの価値観であって、その国で生きる当事者には優れた政治家かもしれないのではないかなぁと。
例えば私などは、ヒトラーの行った政治は大嫌いですが、
それでも当時のドイツ国民は彼を支持していたわけで…。
北朝鮮を統治するキム・ジョンイルが私たちには独裁者に見えても、北朝鮮国民にとっては地上の楽園を身をもって守ってくれている偉大な方なのかもしれませんし。
そもそも"善悪"の捉え方は、風土や歴史的背景によって異なる点が甚だ多いですし…(個人的には、漢の劉邦が唱えた「殺さず、盗まず、犯さず」が万国共通の倫理観であって欲しいと思いますが)。
当事者が良いとしていれば、私たちの目にいかに不可思議な存在に見えようと、存在していいものだと思います。
まぁ、日本に迷惑をかけなければ。


投稿: ちゅう太toじゅぁきさん | 2006年11月 9日 (木) 12時06分

正義という言葉は簡単に使っていいものではないと思うんですよ。
それは各々が持つ立場、価値観によって「正しい」となるわけで。
アメリカが振りかざす「正義」は同調しない(出来ない)人から見ると単なるエゴでしかない。
正しく表現をしようとするなれば「自分たちの正義」であるべきなんですよね。
そして思いの数だけ「正義」は存在することを踏まえた発言をしなければならない。
これが理想だと思います。

人道的、という考え方がひとつの物差しとなるべきかな。
その観点からすると他者を蹂躙したフセインは裁かれる面も多々あるわけで。
ヒトラーもアウトバーンを作ったり、自動車の量産という功績を残したのは確かだけど、
それ以上の非人道的行為の方が重いというのも事実。
同列で考えるなら確かに彼も「悪人」なわけですが。

この死刑の宣告は、ある意味見せしめ的というか、イラク問題のひとつの区切りを
作ってしまいたいっていう意図も見え隠れする気がします。
それって勝者の独断なわけであって誰かが喜ぶわけでもない。
イラクの人にとって、それはどうなの?という疑問が生じます。

投稿: タカマル | 2006年11月 9日 (木) 14時13分

今回は非常に面白い(失礼かな・・・)価値観があるんだと、考えさせられました。
蛮行にいたるプロセスに陰と陽があるのは確かですが、私はその陽は時間はかかるが、そのプロセスを通らなくても生まれると考えていました。
というより決め付けていました。

例えば戦争により武器の発達のほか、医療もそうだし、電化製品なども急激に発達しました。
その恩恵を確かに受けていますから、この部分は明らかに陽の部分です。
しかし、戦争がなかったら私達はその恩恵を確かに受けてないですが、それが果たして戦争で多くの命と比べた結果として受け入れるべき代償なのかと思ってしまいます。

このへんがどうも違うようで、なんか新たな発見です。
>まぁ、日本に迷惑をかけなければ。
そう、確かにそうかもしれないですね。
ちょっと奢りに近いものがあったかもしれません。

ちなみに、フセインは傀儡政権のイラクで判決がでました。
イラクの法の下の判決です。
一応アメリカの意図はあるんでしょうが、表向きはイラクの司法に基づいているので、しかたないかなぁと・・・。

だから大量破壊兵器に言及してないのかもしれないと思ってました・・・。

投稿: じゅぁき | 2006年11月 9日 (木) 16時15分

こんばんは^^

「正義か・・・そんなものこの世の中にありはしない」という手塚先生のブラックジャック氏のコメントを思い出してしまいました。正義というのは人間のわがままなんですかね?つまり正義は悪?難しいですね。ただ、私も今回のアメリカは確かに横暴すぎると思います。。欧米もとい、横暴か!っていうのは冗談で^^;

投稿: セイジョージ | 2006年11月10日 (金) 02時23分

タカマルさん! どうもお久しぶりです。どうしてまた、こう、言葉を整頓するのがお上手なのでしょうか。私なんてしどろもどろになってしまうのに…。

正義という言葉に込める価値観は、個人や団体、地域、国などによって本当に異なりますよね。
「デスノート」という漫画が近頃流行していますが、あれも個人レベルの正義的価値観の違いを表した、一つの物語かもしれません。その土台は私たちの常識に置かれていますが。

>>そして思いの数だけ「正義」は存在することを踏まえた発言をしなければならない…
そうですよね。できるだけそのように行動することが、品性なのではないかなぁと思っています。
ただ、本当に難しいのですよね(理想であって、あまりに現実に在りづらい姿なのだろうと思います)。場合によっては尊重してばかりもいられない状況が存在しますから…そういったとき、誰かが言葉なり暴力なり、立場なりといった"武器"をとるのでしょうか。

>>人道的、という考え方がひとつの物差しとなるべきかな…
そうですね。他者を傷つけない、迷惑をかけない、泣かさないように、といった具合の…かといって、人間が傷つく要素は個々によって様々だという言い方もできるでしょうから、自らの経験と想像力を駆使してそうならぬよう努力するしかないのかもしれませんが…。

>>他者を蹂躙したフセインは裁かれる面も多々あるわけで…
第三者である私たちの観点では、基本的にそのような…"他者を蹂躙した非人道的行為"になると思います。
ただ、彼が勝ってしまえば、彼と彼を支持する方々がイラクでの正義を名乗る一番の権利を奪取するのでしょう。フセインは負けたからこそ現在責められるべき立場にあるわけで…そう思ってしまうと、なんとなく、彼が責められるべきはフセイン支持派の人々(国民も含め)を路頭に暮れさせ、あるいはアメリカとの開戦に至ってしまった経緯なのではないか、つまりイラク代表者としての責任が問われるべき、と感じるのです。
虐殺や侵略は、私にとっても苛立たしくこの世から無くなってくれないかと願う行為です。それでも…"正義"は各々によって異なること、そして勝敗によって何が生まれるかということを考えると…他者(あるいは思想の異なる他民族など)の正義という内面的価値観によって裁かれるのは如何なるものか、と考えました。なんと申し上げればよいのやら…上手く伝わるか不安ですが、そう、ビジネスライクに。

…って、まぁ私も当事者ではありませんから…これ以上の言及はまた品性を欠く行動になりますよね。

>>それって勝者の独断なわけであって誰かが喜ぶわけでもない…
現状ではそのように見えるんですよね、本当に…。
切ないです。
負けるというのは、本当に無残で厳しいものなのだなぁと、物悲しくなります。


投稿: ちゅう太toタカマルさん | 2006年11月10日 (金) 06時05分

一日に二度も…申し訳ありません、じゅぁきさん。それでいて、どうもありがとうございます。

別に何も失礼だと思いませんよー(涙)。

>>それが果たして戦争で多くの命と比べた結果として受け入れるべき代償なのかと…
切ない話ですが、日本の状況に立って考えるならば…現在、日本で生活し根ざしている以上、既に「受け入れている」ことになってしまうのではないでしょうか。
例えば先の大戦も、GHQ統治時代も、朝鮮戦争も、冷戦も、後に生まれてきた人々は何も否定することができませんし、ただ享受するしかないように思います。消すことのできない事実の上に生きているのですし…(まぁ、アノ頃の時代は何が事実だったのか未だに不鮮明な部分が多いのですが)。
ただ、できることは思考停止した状態で受け入れるのではなく、受け入れたことにより今後何を生み出せるのか考慮する、あるいは善処することしかないように思います。
個人的な思いではありますが、起きてしまった歴史を否定し責め立てても(こうするべきだった、という後悔の念で留まってしまうのも同様)、何も生み出せないと思います。そのような、ぼんやりした時代が戦後ウン十年なのではないかなぁ、と感じています。
過去の現実を、過去の常識と倫理観、法制度と情勢をもって受け入れ、現在の状態に照らし合わせ、そして未来を考える…といったような流れが理想的なのではないでしょうか…?

>>一応アメリカの意図はあるんでしょうが、表向きはイラクの司法に基づいているので、…
そうですね。フセインがイラク代表者であった責任が追及されるのではなく、非人道的な人間であったという視点の下で裁かれるのは…ひどくアメリカの意図を覚えてしまいます。フセインが統治するイラクなどを悪の枢軸と例え、テロリズムと評したわけですから…。

勝負の結果はどんなものでも厳正であって欲しいので、アメリカが勝ったのだから何もかも仕方がない、とも思うのですが…。

投稿: ちゅう太toじゅぁきさん | 2006年11月10日 (金) 06時33分

どもです、セイジョージさん。私もブラックジャックを始め、手塚治虫先生の漫画は大好きです。幼い頃、父の本棚から「火の鳥」「鉄腕アトム」など…色々読みましたよ。もう何度も読んでいるのに、今読んでも面白いから不思議ですよね。
ブラックジャックも大好きです。彼は正義や常識といった、感情や状況に左右される価値観よりも、金という万国共通の価値観にそってしっかり仕事をしたプロに思えました。純粋に、生命を現在ある共通の価値観(レート、と言ってもおかしくないような。。)に変えて、その重さを教えてくれたような…。

>>正義というのは人間のわがままなんですかね?
どうなんでしょうね。押し付けられている方々には、相手がワガママに見えてしまいますし…。先のコメントでタカマルさんが仰っておられたように、「思いの数だけ「正義」は存在することを踏まえた発言をしなければならない」といった品性を忘れちゃならないってことでしょうか…。

手塚治虫先生の漫画のセリフで表すなら、
(宗教戦争を幾度も繰り返す人類を見て)
「宗教とか人の信仰ってみんな人がつくったもの。そしてどれも正しいの。正しいもの同士の争いは止めようがないでしょ」
という火の鳥の言葉が、的を得ているような気がします。

投稿: ちゅう太toセイジョージさん | 2006年11月10日 (金) 06時43分

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