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2007年1月19日 (金)

旦那の友達。

この数日間――例によってブログを放置してしまったわけで、コメントの公開が遅れてしまったじゅぁきさん、セイジョージさんには本当に申し訳ない限りで冷や汗をかいているのだけれど――ちょいと、忙しかった。忙しいって、子供もいない主婦に、一体何の用事があるんじゃいとツッコミが入りそうだけれど、珍しく私たち夫婦の家にお客がいたのだ。

お客と畏まって言うほど距離のある方ではない。旦那の、古い友人の男性だった。旦那と中学まで同じ学校に通い、その後ご両親の都合で関西へ移り住むことになり高校時代はそちらで過ごした。大学は東京の学校を受験しめでたく合格したので、その五年間(一年留年したらしい)は再び東京で過ごし、専門学校生の旦那とは麻雀、パチンコパチスロなど――随分遊び歩いたという。卒業後はご両親の暮らす関西に戻り、そちらで仕事を続けているのだけれど、今回なんでも東京での仕事があるということで、この間の土曜日からウチに泊まることになったのだ。

私も彼とは初対面ではない。旦那がまだ私の"彼氏"だった頃、何度か一緒に食事をしたことがある。一口に言えばとても頭の良い方で――日本では一番のエリート大学に入学したという経歴もあるのだけれど、そんなことよりも、目の前にいる相手を不快にさせないどころか十分に楽しませるテクニックを持っている方だった。何気ないことだと思われる方もいらっしゃるだろうが、これって、本当に難しいことなのだ。相手を不快な気分にさせぬよう、配慮しきることだってなかなかできるものじゃない。ささいな言い回しやニュアンス、その時の視線や仕草によって、ちょっと疑問の残る状況はどうしても生まれてしまうもので――親しい間柄であれば特別気にかけないものでも、まだ友達とは呼べない微妙な距離のある関係だと気にしてしまうような、本当にささいなモノなのだけれど――そういった小さな"ズレ"を相手に覚えさせない方だった。

細かいとか神経質だとか思われてしまうかもしれないが、意外と私ってば人見知りで、その上その場では楽しそうにはしゃいでしまう厄介なタイプなので、内心では相手のニュアンスや言葉の選択、仕草がどうしても気になってしまう。単純にその場が恙無いものになっていればよいだけなのだけれど、そのためにどうしても神経質に、そして緊張してしまうのだ。後から「あの時こんなこと言わなきゃよかった」とか「もっと違うニュアンスで言えばよかった」とウジウジすることなんて星の数ほどたくさんあるし、あるいは「あの人がこういう言い回しをしたってことは…」とやっぱり考え込んでしまうケースなんてザラにある。

だから彼のように、楽しい時間を作り出すことが柔軟にできる方はとても有難く、嬉しい存在だった。まぁ私が「あの時こう言えばよかったかな」なんて後から悩むことはたくさんあるけれど、彼の態度で私が悩んだことは一度も無い。その上、気を遣って無難にやり過ごすだけではなく、こちらを笑わせてくれるのだ。付き合いの浅い私も腹のソコからケラケラ笑ってしまうような――とても優しい方だ。それでいて、例えば昨今のニュースやパチンコ業界、あるいは趣味の話題もろもろにくっついてくる、彼なりのエッセンスは聞き手を引き込む面白さがあった。難しい話題でも決して退屈になることなく、こちらはフムフム頷いたり、時々笑ったりしながら、彼の口から流れる内容にノってしまう力があって――こういう方は本当に頭がいいんだな、としみじみする。

ちなみにウチの旦那はバカだ。旦那がする話なんていつも的を得ないし、要点が全くわからなくって、私はいつも「だから?」「それで?」「なんで?」と聞き返してしまう。5W1Hっていうのは文章だけではなく会話でも重要なのだけれど、旦那は全くそれを解していないのだ。まぁ、だから気楽に一緒にいられるのだけれど、それにしたって一体どうして旦那と彼が未だに親しい友人関係なのか……謎だ。
まぁとにかく、前置きが長くなってしまったけれど、私は彼の宿泊を歓迎していた。

……そう、歓迎していたのだけれど。

彼が宿泊することを旦那に聞いたときのことだ。

「お前がアイツと一緒にいて楽しいことはわかってるんだけどさ」
「うん」
「お前にしてみれば、心のどこかで嫌いになっちゃうんじゃないの? ああいうタイプ」

旦那は本当に泊まらせていいのか、ということを確認したいのだろう。それは、彼が今こそ韓国籍ではあるけれども、心は北朝鮮にある在日コリアンだからだ。もちろん旦那同様、日本の学校で教育を受けて日本人の友達も多い環境で育ってきたのだけれど、ご両親の影響なのか先祖への思いなのか、色々あるのだろうとにかく、心は北朝鮮にあった。だからといってキム・ジョンイルを支持しているわけではない。それでも、北朝鮮に対する自らのルーツとして打ち消せない強い思い入れがあることは確かだ。

もちろんそれだけで私が彼を全面的に嫌ってしまう理由にはならない。旦那は、「気持ちは北朝鮮にあるのに、日本で暮らしやすいからといって国籍を韓国にしたタイプを、オマエは嫌いじゃないのか」と聞きたいのだ。

「確かに……軟弱だと思うし、そういう姿勢は基本的に好きじゃないよ」私は言った。
そう、本当に好きじゃない。これまでブログでも似たような話題を何度も書いてきたけれど、国籍は決して、安楽に暮らすためあるいは"隠れ蓑"のツールじゃない。もっと、強い決心や覚悟や、あるいは愛着があって、そして素直な気持ちで選択するべきものだ。

旦那の古い友人である彼は、もとは在日"朝鮮"人で、彼のご両親などは――送金もしている。もちろん韓国籍になってからも、だ。その話は旦那から聞いたことがあるし、そんな話題になるたび、日本人である私はちょっと憂鬱になる。そして憂鬱になる気分を、私もたびたび旦那に漏らしていた。

「でも、アンタはどうなの?」私も旦那に聞き返す。
「オレも…心のどこかでは苦手だよ。まぁ国籍選択の姿勢まで、強く苛立つことはないけれど――アイツは、オレと同じ年齢で、似たような環境で育ってきたのに、どういうわけか朝鮮好きだし」
「それは……どこの国を好きかなんて、それはヒトの自由ってやつよ。私がイヤなのは、どこの国を好きかとか、ナニ人かってことじゃなくて、言ってみれば日本のシステムを理不尽に利用することだね、自分たちのために」
「まぁ、それもムカつくんだけど、アイツも、たまに、在日ってコトを押しつけてくるから」

旦那は国籍が韓国であることを除けば、政治や経済やもろもろのニュースに対する考え方も、会話のニュアンスも好みも、まるで日本人だった。この国籍が韓国であるのに心は日本人という立場も曖昧で、私は好きじゃない。でも義母と国籍が違ってしまうなんて、一体義母はどれだけ寂しいことだろう――だから、私たちに子供ができたら必ず日本籍を取得することを条件に、結婚した。
そんな旦那は、「在日ってコトを押しつけてくる」――つまり、在日であるという連帯感を持って接されるのが苦手だったし、むしろ大嫌いだった。まぁパチンコ屋なんてものをやっているとそういうタイプの人間に会うこともしばしばだし、旦那も対処に慣れているのだけれど、「オレはどうしたって北朝鮮にも韓国にも愛着が湧かないし、自分の育った日本が好きなんだ」という強い気持ちがあるのに、それを声を大にして言えないジレンマがあるのだろう。

「でも…友達なんでしょ?」面倒そうな表情をしている旦那に確認する。
「まぁね。確かに、友達だよ。一緒にいて楽しいから」
「私も一緒にいて、楽しい相手だよ。たとえ、軟弱な理由で国籍を選択する人であっても」
「……うん」

難しい。

アカの他人であれば、一体ナニをしているんだと簡単に苛立てる事由であるというのに、親しいとどうしても、気持ちがグラついてしまう。こんな私も、軟弱なのかもしれない。

「じゃあ、アイツが、オマエの前で、北朝鮮がどうだとか在日の力がどうだという話題をしたら、どうする?」
「それは絶対にないでしょ」私は笑った。彼は、"とても頭のいい"人なのだ。決して目の前にいる相手を不快にさせない人なのだ。今までも一度だって、彼の口から朝鮮半島の絡んだ話題を耳にしたことがない。きっと彼が私を気遣っているのだ。そのことは私も解っていたし、私だってそんな話題を仕掛けたことがない。

「まぁ、そうだよな、アイツは絶対にそういう話をしないよなぁ。オマエの前で」
「いや、でも、万が一だよ」しみじみする旦那に私は言った。「万が一、そういう話題になって、私が不快になるようなことがあれば、キッチリお相手するよ――アンタに在日の連帯感を求めていてもそうするね」
それを聞いた旦那はそうか、と頷き、クククと笑っていた。全く何が楽しみなのだろう、本当にバカ……と私は溜息をついた。

旦那の友人である彼が、例えばどんな出自で、どんな思想を抱いていて、そこからどういった行動を選択するのか――殆どが私個人に関わりのない話なのだけれど、中には私が知ると苛立つ内容もある。その苛立つ内容を旦那から聞いて、面倒で憂鬱で、一体どうしてそんなことするんだという気持ちが芽生えるのだけれど、彼自身の口からその内容が流れてこないその気遣いを大切にしたい気持ちもあった。相手から売られているわけでもないのに、こちらからいちいち口論をふっかけるのもむろん大人気ない行動だし、なんといっても彼は一緒に会話をしてとても楽しく、優しい相手なのだ。そんな相手との関係を、簡単に失いたくない気持ちが強かった。
ただ、私のこういった姿勢はやはり軟弱なのかもしれない――微妙な迷いが、「不快になるようなことがあればお相手する」というセリフに繋がった。

もちろん、彼が宿泊している間、一度たりともそんな話題になることはなく、とりとめのない日常の話、仕事やニュースの話、色々とおしゃべりをして酒を飲んで、とても楽しい時間を過ごした。旦那も私も「まるで新しい家族ができたみたい」と新鮮な気持ちを味わっていた。まるで親戚のおじさんやお兄さんができたような慕わしさがあって、彼が東京を離れるときは二人揃って「もっと泊まっていけばいいのに」「週末までいれば?」と、本気で引き止めてしまうほどだった。

北朝鮮も韓国も朝鮮半島も、在日コリアンも、そんな話題も上がらなければ、そんな話題をしたいという感情すら湧かなかった。色々お話をして、笑った――こうしてみると、やっぱり私もだらしない姿勢を持つ人間の一人なのかもしれない。それでも、仕方がないのだ。楽しさには、勝てない。

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コメント

なまじギャンブルなんてやってると一つの台に対して「勝負」と見るか「娯楽」と見るかで投資の額も変わってくるし人に対してもそうだと思いますけど「一つの事を完全に徹底できる人間」っていうのは…特に人間関係まで徹底できる人は…もはや人ではないと思います。
全て否定する必要もないし全てを肯定する必要もないのでは?それが「だらしない」と思ってしまうのは自分の事を後回しにしすぎてしまっているのではないかと…気分のムラがなければ人を好きにもならないし嫌いにもならないでしょうけどそれじゃ生きてる意味があまりないように思ってしまいますし…好きになるか嫌いになるかは結果論でその時その時の楽しいと感じる事や苛立ちを感じて好き嫌いを決めるわけだから楽しい=いい事でいいじゃないですか(ノ´∀`*)

投稿: randomaize | 2007年1月19日 (金) 05時24分

彼のような人は本当にいいですよね?
相手に気遣える、たぶん分け隔てなくだと思いますし。
羨ましい限りです(笑)。

なんといっても笑わせられるって素晴らしい事です。
私にはできません!!・・・orz。
たまにミスでボケるくらいしか^^;;。

自分もかなり小心者なので自分の発言にびくつく時があります。
で、自分も考えるから、みんなそうだろうと無意識に思い込んで、そんなこと思ってない相手を勝手に違う人物像で見てしまったり・・・。

まぁ、それでもなんとかやっていけるのでいいかと^^;;。
自分が楽しくないと、少なくとも相手も楽しくないですから(爆)。

投稿: じゅぁき | 2007年1月19日 (金) 11時30分

どもです、randomaizeさん、なんだかお久しぶりです。近頃殆ど更新も出来なかったのに、忘れないでいてくださってどうもありがとうございます♪

>>全て否定する必要もないし全てを肯定する必要もないのでは?
そうですね。オールオアナッシングになってしまうと、よろしくないですよね…。
旦那ともども、彼の国籍変更の問題や日本人(あるいは日本)に対する考え方を、こちらはどのように受け入れたらよいものか、アレコレ悩んでしまいました。本当に一緒に時間を過ごすと楽しい方で、できればこれからも良い友人関係でありたいなぁ、なんて願っているのですけど、万が一そんな会話になったらどうしようとか、できればそんな会話はしたくないなっていう思いがありました。ただただ、仲良くできればいいのになぁと。。。

一つのことを、人間関係にまで徹底してしまうのって難しいし、やっぱりできないものですよね。


投稿: ちゅう太to randomaizeさん | 2007年1月21日 (日) 17時46分

どもです、じゅぁきさん。よかった…(涙)。随分放置してしまったので、心配でした。。覗いて下さっていて、感謝です。

>>なんといっても笑わせられるって素晴らしい事です。
いやー、ホントに彼はいい人です。ビックリ(笑)。
気遣いも出来る上に、物知りなんですよね。それでいて、面白おかしく色々話してくれるので(なんていうか、ウンチクくさくないんですよ~)、本当におしゃべりしていて飽きない方です。
「もっとおしゃべりしたいなぁ~」と相手に思わせちゃう、魅力のある方で、ちょっと尊敬しちゃいます。本当にお兄ちゃんみたいで(笑)。

それに比べてウチの旦那ときたら…おっとっと(笑)。

>>自分もかなり小心者なので自分の発言にびくつく時があります…
私も相当な小心者です。。。内心かなりテンパっているときが多々ありますよ…。なので、「びくつく」っていうの、エラく共感しちゃいます。本当に一体どーしてまた、こんな性格になっちゃったんでしょーか(笑)。

>>まぁ、それでもなんとかやっていけるのでいいかと^^;;。
もちろん!
それに、小心者でないと気づかないことってありますしね(…と自分をも慰めてみたり。。)。

最終的にはその場にいる皆が、楽しければいいんですよね。自分も含めて…。


投稿: ちゅう太toじゅぁきさん | 2007年1月21日 (日) 17時58分

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