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2007年3月25日 (日)

鬱な彼女への処方箋

二週間ほど前に女友達がひどく落ち込んでいるという話を書いた。以前勤めていた会社(出版社)の同僚なのだけれど、担当する仕事量が増えたのに比例して、拘束時間つまり日々の残業がかさんでしまい、なかなか休みづらい状況で精神的に参っている。この業界で身を立てたいとどんなに自ら望んだ仕事であっても、気楽に休める時間がなければ息がつまってしまうだろうし、モノ作りに携わるという仕事上、自由に本を読んだり映画を観たりすることができないと、感性がブレてしまってどうしても仕事に行き詰まりを覚えてしまうだろう。頑張りたい仕事だけに、ベストを尽くせない彼女は――もともと神経質な性格も手伝って、ひどく疲れて落ち込んでいるのだ。

あれからも度々電話がかかってきては「もう疲れたよ」だとか、メールで「会社行きたくないよ」なんて愚痴をこぼしていて、状況は相変わらずのようだった。私は彼女が参っている理由も、彼女自身の考え方もある程度は理解しているつもりだから、共感する姿勢でそれらに耳を傾けていた。そりゃ疲れるよね、休みたいよね…といった、相槌を打つような会話をずっと繰り返していた。

既に彼女は頑張っているのだから、「頑張れ」なんて言うのは励ましにもならないと思ったし、いくら自分が以前勤めていた会社であっても、現在の仕事状況をリアルに知っているわけではないので、仕事の流れに関するアドバイスなんておこがましくて口が裂けても言えない。「うだうだ言わずに休んじゃえ」と、他の方には言うこともあるかもしれないが、彼女は生真面目な部分もあるので、そんなセリフはいよいよ追い込んでしまいかねない。「休めたら、とっくに休んでるよ」とより頭を抱えてしまいそうだ。

それに、まぁ、「これが私だったら…」なんて、安易ではあるけれど、他者の悩みを聞くにあたって基本的な見地に立って考えてみたところ、きっと私であれば何も言わずにただ話を聞いて欲しいと願うだろう。どうせ目の前の現実から逃れることはできないのだから、いくら辛くても乗り越えなくてはならないのだ。いや、逃げることは不可能ではないのだけれど、それは決して自分の望むところではないだろう。どんなに参っていても、こなさなくてはならないと自覚しているだけに、辛いのであるから――他人の、「頑張れ」だとか「休んでみたら」なんてセリフは、有難くないわけではないがどこかで白々しく聞こえてしまうに違いない。ワガママかもしれないが、こんなときは、ただ黙って自分を肯定して欲しいと願うだろう。こんなときは、自信がないのだから。

それが私が選んだ彼女に対する姿勢で、特に何も言わず、聞かず、彼女が言ったことに頷くばかりだった。これが完全に正しい姿勢だとは思っていないけれど、例えば彼女に対するアドバイスなどは、彼女よりももっと経験のある方々が言う方がよほど効果的だし、私は友達なのだから彼女をただただ甘やかすような、全肯定の相槌を打つことに決めた。これはこれで、友人としての一つの姿勢としてあってもいいものだと自負している。それに、彼女は両親との仲がイマイチだし、今はオトコもいない。甘やかしてやらないと、なんてオバサンくさい気持ちになってしまうところもある。

そんなわけで度々彼女からの連絡を受けては、しんみりとした会話に相槌を打ち続けてきた。彼女も彼女で、私が旦那の生活時間帯に合わせて、勤めていた頃よりもずっと不規則な生活をしていることを知っているからか、深夜だろうと早朝だろうと、気兼ねなしに連絡をくれた。"くれた"、というのは――私は悩んでいることを我慢されてしまうとむしろ困ってしまうので、参っているときはストレートに連絡をくれた方が聞き手として有難いのだ。もちろん対応できないときは、鳴り続ける携帯を放置してしまうことになるのだけれど、その分せめて、相手が連絡したい際に連絡してもよいのだという、安心感めいたものは失わせたくない。まぁ、完全にはムリなのだけれど。

そう、そして、一昨日――木曜日のことだ。

深夜も彼女から電話があった。深夜、といっても午前四時という早朝とも言うべき時間で、「眠りたいけど眠れない」といった内容だった。彼女は終電で帰宅したのでクタクタに疲れているはずなのだけれど、寝付けないという。まぁ、精神的に不安定だろうとそうでなかろうと、遅くに帰宅したからといって、疲れているからといって、すぐに布団に潜れるわけではないのだけれど――これまでの彼女の状況から察するに、もしかすると朝起きることがプレッシャーになっていて、寝付けないのかもしれない。

「眠れないんだ、しょうがないね」なんて、適当に聞こえるかもしれないが、いやその通り、適当に私も答えてしまう。「ムリに眠ることもなかろうよ」

「でも、明日も仕事だし…今、校了前だし」
校了というのは、雑誌を作っていく上での用語で、聞きなれている方もたくさんいらっしゃるだろうが、大雑把に言ってしまえば全ての原稿が出揃って印刷所に放り込める状態になることだ。つまり、この校了を迎えた際、その雑誌の制作はひと段落――出版社側で行う作業はなくなり、あとは印刷所の仕事となる。

「そっか、今校了前か。そりゃ忙しいね」

「うん、でもね、日曜は休めると思うんだ」

「よかったじゃん」心なしか彼女の声が明るかったので、私の気持ちもちょっと浮いた。

「だけど…すぐ四月になるし、ゴールデンウィーク進行に入るかも。ゴールデンウィークを全部休めるなんて最初から思っていないけど、四月中に五月の仕事をある程度進めておかないと…そんなこと、できるのかな…もうどうしよう…」

日曜祝日は基本的に印刷所も会社も休みだし、外部の方へ発注する仕事やそれに関する打ち合わせもろもろを、その前に済ませなくてはならないわけで、そうなると、さらに前に企画そのものを立てたり様々な準備をしてなくてはならないわけで――大型連休前はとにかく時間に追われがちだ。世間では、四月下旬からゴールデンウィークに入るのだけれど、つまるところ、四月中に四月分の仕事を進めると同時に、五月分の仕事もある程度手をつけなくてはならない。どの業界でも大型連休前は多忙となるだろうが、編集者もその例外ではない。ゴールデンウィーク、お盆、年末年始――パチンコ屋の三大回収期として挙げられるこれらだが、その前後は誰もが皆忙しい。

「あぁ、そんな時期だね…確かに忙しそうだね」

「疲れた。もう最近、何をしてても楽しくないの。いつも時間ばっかり気にしてるし。なんだか、いつも、悲しいの。先のこと考えると、憂鬱になる。暗いことしか考えられない。そんな自分がイヤだ。こんなことしか考えられないなんて、イヤだ」

自分の時間を自ら、楽しいとか有意義であるとか、とにかく魅力あるものとして考えることもできず、そのように過ごすこともできない。仕事をしていようと、帰宅してからであろうと、自分自身の時間であるというのに――自分で何もできないなんて、なんて自分はダメで無力なヤツなんだろうと、そう言いたいのかもしれない。

「わかる気がするよ。きっと私も同じ状況だったら、イヤだって思うだろうね」

「そう、もうなんだか情けなくて…楽しいことって何だろ?」

「何だろう」……いや、決して適当に答えたつもりはないのだが(心の声)。

「笑いたいなぁ…どうしたらいいのかなぁ…ねぇ、どうしたらいい?」

むむむ。どうしたらよいのか問われてしまうと、困ってしまう。これまで彼女の自信が回復することを願って、なるべく彼女を全肯定する姿勢をとってきたので――どうしよう。

一瞬、迷ったが、そのとき私が出した答えは――。







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……を薦めた。「笑えるよ」と。電子書籍でも購入できるから、何なら今すぐにでも読めると思うよ、と。

彼女は「えっ、ちょっと待って、何それ」と何度か聞き返し、私は「いや、とにかく面白いから」と何度も答えた。「読めばきっとわかるよ」とも言った。読む時間なんて、新しい書籍を手にとってめくる時間なんて、そんな余裕なんて今ないのよ、と返されてしまうことを内心恐れていたのだけれど――彼女は、「有名な漫画だしね…」と言って、ひとしきり口をつぐんだ。

「何も今すぐに読んで欲しいわけじゃなくて、時間があったら思い出してみて」

「うん、わかったよ」






それから間もなく電話が切れて、三日経とうとしているのだけれど――毎日か、二日に一度はあった彼女からの連絡が途絶えているのは一体どういうわけだろう。やっぱり、そういうわけなんだろうか。いや、校了前だから忙しくて電話をする体力も残されていないのかもしれない。ひょっとしたら、これを読んで思い切り笑って少しは気持ちが晴れたのかもしれないし――どうなのだろう。気になって仕方がない。

ちなみに私も、これまで情けなくて無力な自分を責めたことや、自分ではどうにもならない状況に苦しんだこと、切なくてやりきれなくなったこと――あれこれと人並みに落ち込んた経験はそれなりにあるのだけれど、元の性格が小心者でクヨクヨしがちなものだから、ひとたび落ち込むとそれはそれはなかなか浮上してこない。何をしていても、その悲しみや情けなさの原因が胸の奥をツツいていて、辛くて、いつも困惑してしまう。そんなとき、私はいつの間にか本棚にある「行け!稲中卓球部」を手に取っているのだ。

ウハハハ、なんて笑って、いかに自分が笑うことを忘れていたか自覚すると同時に、「まぁなんとかなるさ」といった前向きな力も戻ってくる。祖父が亡くなった際、遠くに住む従兄弟が持ってきたのがきっかけだったのだけれど(なんだそりゃ、とツッコまないで下され)、以来何かで落ち込む度にこの本をめくるようになった。一度、笑いを取り戻すことはとても重要だと私は思う。ムリに笑顔を作るんじゃなくて、ムリにでも笑える状況を作るのだ。そうすることによって、少しは回復できるんじゃないかと――そう思ったから、彼女に薦めたのだけれど、ダメだったんだろうか。

とても不安だ。今度は私が稲中を読む番になってしまうかもしれない。

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コメント

初めまして。昨年度から密かな隠れファンとしてブログを読み続けていました。
ちゅう太さんのブログを読んでいて、自分と同世代の女性かな?という事と、パチンコ屋のオーナーさんと結婚したとう事と、自分自身のスロプロ旦那と結婚したというまったくもって正反対な生活環境なのですが、何故だか共通点と親近感を覚えました。

最近の話題でも、旦那が何故花男子の松本潤君や小栗旬君じゃないのだろうか…と本気で思ってしまうところや、そのドラマに惹かれた心境とか。更に暴露バトンなどを読んでいても親近感が…
ちゅう太さんのブログを読んでいると、同世代の女性の生き方を小説でも読んでいるかのような深い感覚に囚われたりもします。
そんな訳で時々暇が出来ればここに通うようになりました。

今回書き込みをしたのは、うちの旦那が欝で、彼女のような感じがしばらく続いていたのが印象的だったからです。
その時の私もちゅう太さんと同じようにとにかく相槌を打ってましたね。
なんでも欝状態の人に「頑張れ」とは禁句らしく、何とかなるさ~。と適当気味な口癖のように言ってました。
時にはくすぐり合って無理にでも笑いあった事もあります。

やっぱり人間には無理にでも笑うという事が必要ですよね。
正解などないのが人間関係なのだから、私はちゅう太さんが彼女に話したことを悔やむ必要などないと思います。
便りが無いのは良い知らせともいいますし、今度はのんびり待っていればきっとひよっこり電話がかかってくるかも知れませんよ。

初の書き込みなのに、伝えたい気持ちが専攻して長くなりました。申し訳ないです。
ブログ楽しみにしています。

投稿: | 2007年3月25日 (日) 13時32分

初めまして、月さん。昨年から読んでいてくださったなんて、どうもありがとうございます。近頃新機種情報の話題もめっきり減って、いよいよただの趣味日常ブログとなりつつあるこのページですが、そういった内容でも親近感を覚えてくださるなんてとても嬉しいです。ありがとうございます。

きっと同世代なのでしょうね。ちなみに、私が中学高校の頃は…ミスチルや小室サウンドの全盛期で、高校二年か三年の頃に「ダウンタウンのごっつええ感じ」が終了したことをとても悔やんでおりました(いえ、どうでもいいことかもしれないんですけど、とても思い出深い記憶なので…その…(汗))。高校時代に酒鬼薔薇事件もありました。大学を卒業する頃は就職氷河期でしたが、まぁマトモに就職活動もしなかったしな…。
ええと、なんだかとりとめのない流れになってしまいましたが、そんな具合でございます(笑)。

>>なんでも欝状態の人に「頑張れ」とは禁句らしく、…
そう、そのようによく耳にしますよね。禁句となってしまう原因や理由は多々あるのでしょうし、必ずしも重荷になってしまうとは断定できないようですが、このことを知ったとき、自分がいかに今まで「頑張ってね」なんてセリフを適当に吐いてきたか、実感しました。
小さい頃も今の今だって、まぁ適当に「頑張ってね」「まぁ頑張れば」といった風に、まるでその場を流すかのように言ってしまうのですが、別に相手が欝であるかどうかともかく、よろしくないことですよねコレは。
「頑張って」と私自身がきちんと思っているならばアリなんですけど、「頑張って」とは思っていないことの方が多いので(汗)。どちらかと言えば、「頑張って」というよりも、「上手くいくといいね」とか「元気でいられるといいね」といったことを願う気持ちの方が強いわけで…。
雑にモノを言ってきたなぁ、とちょいと反省させられた話です。

笑うことって、必要ですよね。鏡を見てムリに笑顔を作ることはどうかと思いますが(笑)、笑える状況に持っていくことはとても大切だなぁと思います。くすぐり合うのもいいですね。なるほど。そういう手もあるわけですね(笑)。
私は新しいことを始めるとすぐにプレッシャーを感じたり、ささいなことをいつまでも気にしてしまったり、我ながら情けないほどのウジウジぶりなので(笑)…一度落ち込むと、鬱病というわけではないのですが、キリがないほど落ち込んでいます。
そんなとき、わりと稲中に助けられたんですけど…(爆)。。。

彼女に届くと良いんですが、この笑いが(願)。

>>初の書き込みなのに、伝えたい気持ちが専攻して長くなりました…
そんなの、本当に全くお気になさらないで下さい!
ほら、ご覧になってみてください、私の返事の、この長さ!(汗)
今までも、たった三行のコメントに、つらつらだらだらと何十行もの返事をしてしまったり、他のブログさんにも長いものを残してしまったり…

なので、むしろ長いコメントを下さると嬉しいです。「これでお返事が長くなっても変じゃないよね」と(笑)。
それに、読んで感じてくれたことを我慢せずに書いてくださった方が、有難いです。長さはどうでもいいですよ、本当に。

これからも宜しくお願いします。初書き込み、ありがとうございました。今後もよろしければ、お気軽にコメントを残して下さいね。

投稿: ちゅう太to月さん | 2007年3月25日 (日) 16時44分

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