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2008年11月19日 (水)

11/19 雑記

今から半年ちょっと前のことだ。出不精で、一人では自宅や地元から滅多に出歩くこともない私だけれど、その日は早朝から駅に向かっていた。大したことは無いものの胃を悪くしていたので、バリウムを飲んで簡単な検査をするために地元の駅から数駅先の、ちょっと大きな病院へ行く必要があった。当然胃をカラッポにするために朝食をとってはならないし、前日の晩は「ごはんですよ」を混ぜた粥しか食していないので、弱っていたとはいえ空腹気味。むしろ溢れる胃酸のせいでキリキリと痛むわけで、足取りはどうしても重くなってしまう。

しかも四月を過ぎていたというのに朝まだきは寒いもので、冷たい空気が首や肩、腰をギシギシ攻めてくる。薄手のコートにストールを巻いて、この時期なりの厚着をしたつもりだったのだけれど、あぁホッカイロを腰に貼ってくるべきだったとひどく後悔していた。道中のコンビニで一枚買ってみようかとも思ったが、いや、そんなことしたら検査で着替えるときに恥ずかしい思いをするかもしれないし、…そもそもこの時期に売っているのかも分からないし、売っていなければ手ぶらで店を出るのもイヤだからと格好つけて、ついつい御握りを買ってしまうかもしれないし…そうしたら検査もできないし…等と無駄なことをもやもや考えながら、ようやく駅周辺にたどり着く。

先程から"早朝"と書いているけれど、具体的には七時半ごろ。ラッシュの時間帯ではないので息苦しいほどではないのだけれど、既にたくさんのスーツを着込んだビジネスマンが改札を行き交っていた。これから出勤なのか、それとも徹夜明けの帰宅なのか、むろん知る由もないのだけれど、皆の顔色の悪さが目についた。一人でやたら血色良く、ピカピカの笑顔を振りまいて歩く人間なんてそうそういないだろうし、…そもそもそんな人間「通報」される可能性大なのだけれど、とりあえず皆無表情で、視線を落としがちで、白い顔をしていた。女性のように化粧をしているわけでもないので、唇の色も白い。

あぁ、みんな疲れているんだな…我ながら偽善者めいていてイヤになってしまうのだけれど、漠然と切なくなってしまった。

一応、私だって結婚する前までは一人暮らしで働いていたので、それなりに会社勤めの痛みを想像できるつもりだ。朝は決まった時間に出勤しなくてはならないし、残業だってあるし、酷いところは残業手当だってマトモにつかないし、気のいい仲間ばかりが周囲にいるわけでもない。価値観どころか言葉の通じない相手とも仕事をしなくてはならないし、漫画の舞台みたいに面白味のある案件ばかりを扱えるわけでもないし、それでも生産的な姿勢を貫かなければ仕事にならない。それでいて満足なお給料を貰っている方もいるかもしれないけど、貰っていない方だっているだろう。
主婦業を貶めるつもりは毛頭無いし、確かに比べても仕方のない話なのだけれど、少なくとも現在の私…子供がいるわけでもなく、家事や親族内での諸事に対処しているのみの私などより、外で稼いでくる方々の方がずっと大変であることは間違いないだろう。私などはこのように具合が悪ければ、すぐに検査の日取りを決めて病院に赴けるわけだし、日頃は家事であれ雑務であれ、血が繋がっていないにせよ家族とのやり取りとなるが、彼らは違うだろう。体調を崩したからといって、そのような"個人の都合"ですぐに休みが取れるとは限らないだろうし、よしんば取れたとしても、有給を利用するか給料から引かれるか、…結局カネがかかってしまうのだ。

切符を買いながら(Suicaを持っていないのだ)、みんな大変だっていうのに、腹が減っただの寒いだの我儘を言って申し訳ないと…あぁつくづく偽善者めいた物言いで浅はかだと思われるかもしれないが、恐縮した気持ちになっていた。

そんなときに駅の向こう側で、演説が行われていることに気づいた。先程から何やかやと、男性の声で勇ましく吼えているのは認識していたが、言葉を意識して聞いてみると、後期高齢者医療制度に対する否の演説であると分かる。

「お年寄りを大切にしましょう!」声高に叫んでいる。「後期高齢者医療制度、これはお年寄りイジメだとしか思えない。少ない年金からさらに、保険料が天引きされるとは持っての他です! 我々はこの制度に真っ向から反対していきます!」

…どこの政党かは、まぁこの制度にNOを唱えているということでご想像頂けるかとは思うのだが、私は苛立った。

皆、白い顔でこれから出勤しなければならないというのに、一体どういう理由でもってそんな演説が出来るのだろう。年寄りが負担しなければ、代わりに負担するのは間違いなく彼らだろうに。元来、健康保険料だの厚生年金料は安いものでもないし、あと十年近くは年々少しずつ上がっていく仕組みになっていた筈だ。それでいて先には住民税も上がっているわけで、いくら所得税が下がったとはいえ結果的に増税であったのは周知の事実で、しかもこれから消費税も上がるだろうと強く懸念されている。余りにも漠然とした話だけれども十年後にはインフレがやってくるだろう、現在よりも貨幣価値はさらに下がるのでは、なんて今後の経済状況を危惧する連中だっているし、何よりも生きていくにはあらゆる場面でカネが必要なのだ。

もちろん国民皆保険は守られるべき制度だと私も認識しているけれど、誰かが埋めねばならない保険料の穴を、これ以上、一体何故に彼らへ求めるのだろう。求めざるを得ない状況であったとしても、イキイキと早朝から、「真っ向から反対します!」なんて演説をするとは余りに礼儀知らずではなかろうか。確かに「あなた方が負担して下さい」と唱えているわけでもないのだけれど、では誰が負担するんだと考えたとき答えは明白だ。それとも増税抜きに、ナントカしてみせるとでも絵空事を並べるのだろうか。そもそもこの制度は、全ての後期高齢者の負担が増えるわけではない。むしろ八割近く負担の減る方だっている筈で……所詮、反対したいだけなのだ。思考が全く生産的でなく、その上ビジネスマンには失礼なことをのたまう。その政党には、そんな印象を受けた。

誰もがそうかもしれないが、近頃のニュースを耳にするたび少し憂鬱な気分になる。大きく報道されるにせよされないにせよ、何かしらの制度が成立したり、国会に法案が提出されたり、政治家か元政治家が何か意見を述べていたりする。大体が不惑も過ぎて、所謂定年前後の、まぁこう言っては何だが――おじさんおばさん達なのだけれど、彼らは分かっているのだろうか? 順番で言えば、現在働き盛りのビジネスマンや若者、学生、赤ん坊よりも確実に彼らが先に死ぬ。そして残された人々は何があろうと生活していかなければならない。彼らは、そのような人々に良き物を与えるべく、懸命になっているのだろうか? 政治家が私利私欲に走って、なんてお決まりの文句を述べるつもりは全くないし、そんなことを考えているわけではない。ただ、彼らは彼らのことしか見えていない。私達が今後何十年も生活していくことを知らない。現在の子供達がオトナになった頃のことを想像していない。
それとも、私達の声が届くような時期が来たら、そのときに制度でも何でも変えろということだろうか。流石にそれは時間の無駄というものだ。つくづく悲しい。

法案と言えば昨日、国籍法が衆院を可決したそうで――あぁ、申し訳ないが、敢えて言おう。

「先に死ぬ連中は気楽ですね」

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