失言とヤクザとGTO
確か、私が意味不明に気落ちしていた時期だから――二週間ほど前になるのだろうか、その頃、柳沢厚生労働大臣が「女性は産む機械」だの、「子供を二人以上欲しいと望むのは健全」だとかなんとか言って、マスコミはもちろん、民主党や社民党など野党の面々に「女性蔑視だ」と責めたてられ、しまいには与党・自民党の中からも「辞任するべきなんじゃねーの」と声が上がり、やったらめったら非難されていた。
先の発言に関しては、「女性は子供を産む能力がある」ってなことをきっと言いたかったのだろうなぁと文脈的に推測できたし、女性である私はこれといって不快感は覚えなかった。子供を産む能力があるんだから”必ず”産め、あるいは産まない女性は役立たず、なんてコトをのたまわれたら、茶を吹き出して唖然としてしまうのだけれど、どうやらそういうわけでもない。後の「子供を二人以上望むのは健全」――それでは子供のいない、あるいは一人っ子の家庭は不健全なのかと誤解されてしまいそうだが、やはり文脈的に考慮するに彼はそういったニュアンスで述べているのではない。一人っ子の子供は、家庭内で只一人の"子供"という幼く弱く小さな存在であるため、とかく大切にされがちで(まぁ当然だが)、ちょいとワガママな性質に育ってしまう可能性が高いわけで――もう一人、家庭内に子供がいれば、例えば一つのお菓子を二人で分けたり、どちらかがガマンをしたりなど、労りと譲り合いの情操教育ができるわけで、そういった見地から「子供は二人以上いた方がいい」と考えて幸せ家族計画を立てるオトナも決して少なくない時代が、かつてあったはずだ。
というのは、ウチの父母や親戚がそうだった。
もちろん幼いうちからの情操教育は保育園や幼稚園でもそれなりにできるのかもしれないけれど、やはり家庭内で只一人の子供が王様のイスに座ってしまうのは余りよろしくない。かといって厳しくしすぎるのも問題だし、何より兄弟というのは、オトナが必要以上に介入することなしに、幼い子供という同等の立場で互いのルールを家庭内で育めるのだ。これはどうやら、オトナにとっては都合がよいらしい。なんでも、オトナがわざわざ口で説明したり叱責したりすることなしに、精神成長に不可欠の複雑で面倒な諸問題を、子供同士で解決してくれることが多々あるようで――ウチの母なぞは、「子供を産むなら二人以上にしなさい。小さいうちから『分けること』を覚えさせないと、ダメよ」なんて、柳沢厚生相顔負けの適当文句を昔から言っている。ちなみに、母が「だからアンタは産まれたのよ」なんて妹に言ったら、妹は「……私はお姉ちゃん(私)の教育のタメに産まれたんだね」となぜか肩を落としていたのだが、まぁよくわからんがそれでもよいではないか、妹よ。
当然、父も、それでいて両祖父母も叔父叔母も、皆似たような姿勢であるため、私にはイトコがやたらと多く、総じて24人もいる。
かといって今の世の中で――お子様一人が大学卒業するまで一千万以上かかります、なんてCMが流れるこのご時世、子供が一人できました、じゃあそろそろ二人目を…なんて、おいそれとは決定しづらいだろう。むしろ二人以上の子供が欲しいのに、言ってみれば家族で野球チームを作りたいのに、ものすごく難しい現実が目の前と将来に立ちふさがっているわけで、不安で――これは確かに不健全な世の中だ。邪推ではあるが、柳沢厚生相はこういったことを伝えたかったんじゃないだろうか。
それでも、ナンにせよ、どちらにせよ――柳沢厚生相は言葉の選択、言ってみれば言葉遣いってのがものすごくヘタだということがわかったわけで、そういう見地に立ってみればやはり、彼は大臣というポジションに不向きであると考えられる。自らの思考なんて、どんなに言葉を尽くしても様々な表情を使い分けても、在りのままの正確なカタチで相手に伝わるなんてコトは絶対にないと私は思っているけれど、だからこそ、立場と状況に見合った言葉を選択できる必要最低限の能力と論理、そしてより上質な比喩表現が必須なのだ。特に、国民に自らの思想を伝えるツールが言葉(セリフ)ぐらいしかない政治家にとって、論理や比喩表現はおろか、言葉遣いがヘタであることは致命傷だろう。気の毒だが、彼のような人物を大臣として掲げるのも、イチ国民としてちょいと困ってしまう。
……って、そんなこたぁ、どうでもよかった。
柳沢厚生相の"失言"がマスコミに取り上げられていた最中、もう一つ気になるニュースがあった。
麻布での発砲事件である。なんでも、日本でも五本の指に入るヤクザ・住吉組と山口組が抗争していたらしい。その後、渋谷でも同じ事件が起こり、また茨城県鹿島灘には死体が転がっているなんてこともあった。
勘弁してくれよ。失言でどうのこうのと揚げ足をとる前に、もっとやることあるんじゃねーの、……なんて小市民的で単純でちょいと理性も知性もへったくれもないのだけれど、疑問を覚えてしまった。こういうことに苛立ってしまうとキリがないし、なんだか疲れる。
と、いうわけで、先週は晴れてスロットとタイアップすることになった漫画・「GTO」を読んでいたのだけれど、なかなか面白かった。鬼塚教師を始め生徒それぞれがしっかりキャラ立ちしていたし、一つの話題がひと段落つきそうな手前でもう一つの話題が始まって、といった読み手を飽きさせないような配慮もよかった。
だからなんだ。よくわからなくなったところで、久々の更新とさせて頂いて、そんなわけでごきげんよう皆様。

