TMはどっちを向いていたのか
その日の夕方、私はジャグラーTMを打っていた。
既にGOGOジャグラーVが撤去されてしまったその店にはファイナルジャグラーとジャグラーTMが導入されており、どちらも告知形式は豊かであるものの、GOGOランプは小さいし、リール幅も広くてなんだか間延びした感があって、一定の時間対峙するには心情的に厳しいため敬遠していた。他店に行けばGOGOジャグラーが設置されていて、GOGOランプのカタチもリール幅も"V"とは変わりがないのだけれど、ストップボタンは小さいし、何より先告知がないことが食指を引っ込めてしまう。GOGOジャグラーVの、リール回転と同時に光るあの先告知、そして先告知後は意味不明な連チャンが発生するという特典を愛していた私にとって、GOGOジャグラーは天才の親から生まれた秀才の子供、といった印象でやや物足りないものがあった。太字でしっかり「GOGO!」と書かれ存在感のあったランプ、程よいリール幅、透き通った金色の光が施された7図柄、紫色のブドウ、絶妙な告知タイミングと不可思議な連チャン……GOGOジャグラーVは全てにおいてまさに王様で、大好きだった。いや、連チャンはいわゆる"そういう仕様"ってやつかもしれないが。
……と、GOGOジャグラーVへの愛慕は尽きず、他のジャグラーへ浮気はしまいと貞節を貫き続けた私が、一体なぜその店のジャグラーTMなるものに腰掛けていたのか。
データを見ると夕方の時点でBIG14、REG10、総回転数は3200ゲームほどと、それはそれは設定6を期待させるボーナス確率であったためである。データカウンタのツブは、一粒での成立を描いているのもあれば、二粒、三粒のものもあるが、少なくともノーマルAにあるまじき大ハマリは確認できなかった。どうやら初当たりもなかなか良いらしい。ボーナス後180ゲームで空き台となっていたため、やむを得ず座ったのだ。
240ゲームほどで、REGが成立し、その後100ゲーム以内のBIGが2回、REGも2回と小気味よく連チャンしてくれた。
思わず、ひょっとしてこのTMにも"そういう仕様"があるのか、と勘繰ってしまう。いや、ジャグラーの名を冠する限り、きっとどこかに存在しているのだろうが……この台に対してそのような期待をしていなかったので、妙な気持ちになった。メダルが増えた喜びを感じているものの、高設定の予想をもって打っているのだから、"そういう仕様"による初当たりの良さよりも、予想がドンピシャであって欲しいのだ。TMの"そういう仕様"に対する私なりの免疫力は、全くないのだから。
困った。こういう当たり方をされると、何がなんだかわからなくなる。いやそもそも、"そういう仕様"のあったGOGOジャグラーVに馴染んでいた私が、ごく普通の、自然体のジャグラーの流れを知っていると言えるのだろうか?
再び200ゲームほどでREGが成立。その後80ゲームでBIG。
ううむ…どうなのだろう――いや、本当にメダルは増えているのだから、悩む必要はないのだけれど、このTMがドチラを向いているかによって、今後の展開を決めねばならないのだ。コチラ側を向いていれば、できるだけ長時間打ち続けるべきだろうし、アチラ側を向いているのであれば、自分なりのヤメ時を見計らわないと大変なことになる。データカウンタでは大きなハマリを確認できていないし、コチラ側を向いている可能性は高めであるものの、なんとなく、なんとなく連チャンの仕方が……アチラ側なのだ。
なぜかって、ボーナス終了後、「多分もうすぐ光るだろう」と思っていたら本当に光るのだから、アチラ側の可能性も否めない。いや、本当に、そういうモノなのだ、アチラ側は。
しかし、アチラ側であった場合のTMのヤメ時って、大体いつなんだろう。ヤメ時にあまり迷いたくない私は内心、本当に困っていた。こんなことなら、日々ここのTMをチェックしておけばよかった。とほほ……と困り果てていた頃、幾度かの初当たりと連チャンを経て、既にメダルは千五百枚ほどに達していた。
そんなとき一人の青年の視線に気づく。ベージュ色の分厚いジャケットを着込み、真っ黒なニット帽をかぶったその青年は、先ほどから何度も私の背後に来てはメダルとデータカウンタを見つめ、首を傾げたり、アゴをさすったり、そして何やら熱い視線を送っているのだ。
この台を狙っているのだ。
確かにこの台はシマ一番の優秀台で、REGはおろかボーナス総数も格段に多い。総回転数をチェックできなくとも、高設定の期待を持たせるには十分の雰囲気を持っている。しかも打っているのは、たまに第三ストップボタンをねじねじしてはいるものの、完全光速フリー打ちのオンナである。ある程度の出玉に満足してヤメるだろうと、期待されているのかもしれない。そして、あわよくば青年もこの台で……。
そう上手くいかないものなのだ、青年よ。
そのとき私はこの台を打ち切ってやろうと心に決めた。そうだ、考えてみればこの台でアチラ側にありがちの大きなハマリは確認できなかったし、初当たり確率はどう考えても高設定のそれなのだ。他のTMも初当たり状況は芳しくないものの、かといってノーマルAにあるまじき鬼のようなハマリは見受けられない。この台が自然体の高設定である可能性は十分にある。それならば、打ち続けるべきだ、人として。
決心した私はしっかり台を見つめ、完全なる光速フリー打ちを始めた。おそらく様子を伺いに来たのだろう、再びやってきた青年はなんとなく先ほどと違う雰囲気を見て取ったのか、その後シマへ来ることはなかった。
そしてその後、私は980ゲームハマった。
帰った。
北電子「アイムジャグラー」の受注受付がどうも今月16日より開始されているようだ。それに伴い、僅かばかりの情報が入っているので掲載しておきたい。




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